9ナイン9番目の奇妙な人形を見たので感想とネタバレですよ( ・ิω・ิ)


http://9.gaga.ne.jp/
<できるだけネタバレなしで感想>
 暗く陰鬱な雰囲気のダークファンタジー。アニメ作品だがとても子供にゃ見せられない。ダークファンタジーや退廃的な雰囲気が好きな方にはオススメ。見所は映像。マジで◎。最高にかっこいい演出とアクション。そして造形。
 アクションが素晴らしい。主人公達は自分の何倍もある敵に立ち向かっていく。主人公達がやられる姿は痛々しく、血こそ出ないが、グロテスクとさえ感じる。
 80分という時間を駆け抜けていくストーリー、全然飽きさせない。
 あえてかどうかは分からないが、世界観の詳しい事まではわからない。深淵で全てを明かさないストーリーを嫌う方もいるだろうが、この深遠さがダークな雰囲気をよりダークにする。難解ではあるが、とりあえず主人公の目的は目の前にあるので、それを見失う事はないだろう。突っ走る主人公について行けば、観賞に支障は無い程度理解できるはず。

 内包されてる思想についてですが、「人間性」VS「非人間的な物」と言ったところでしょうか。(正確には「人間性のこもった人形」VS「非人間的な機械」ですが、)第一、二次世界大戦やらナチスドイツを彷彿とさせるようなシーンが出てきたりしますね。科学の悪用が問題として取り上げられています。「人間の魂のこもっていない科学なんて!」という事でしょうか?

 しかし、あまりにもダークなファンタジー設定の割に、普通の教育アニメのような主張に埋没してしまった点が意外でしたね。問題を解決するのは、いつでも主人公の勇気。安全を重視する人をを臆病者と断罪するあたり、なんだか子供向けのアニメにありがちな主張ですね。こうした主張が悪いわけではないのですが、状況が状況です。「希望無し、退廃的」な状況の中で、主人公が「勇気と希望」を語るわけですが「なんだが無茶言っているなコイツ」って感じになってしまっています。
 中身はどう考えても子供向けの世界ではないのですが・・・・。なぜ従来のアニメ映画みたいな作りになってしまったのでしょうか。大人向けに突っ走っても良かったのでは・・・・・
 世界はダークで異常なのに、脚本が今までの映画を踏襲してしまった感じ。チグハグなんです。「いったい何でだろ!?」と突き詰めていくと意外と王道な理由に行き着く。「ああ、やっぱりね」 新しさを感じられるのは始まってから10分ぐらいまで。それ以降は設定、テーマ、展開、どれをとっても既視感がある。「深淵」と言いましたが、その底は浅い・・・・
 あと、内容をまとめきれず、バタバタしてしまった点が残念。しかし同時に、説明パートが長い。みんな急におしゃべりになる。説明過多で説明不足。一緒に見にいった友人は「途中で置いてけぼり食らった」と言ってましたね。私はギリで食らいついてました。

 いや、面白い作品なんですよ。マジで。少なくとも映像はどなたでも楽しめる物だと思います。私はガンハマりですね。この監督の次回作に期待大。



<あらすじ>
 オープニング、一人の老人が麻布で人形を作っているシーンから始まる。

 そうして、麻布で作られた人形が、雑然とした一室で目を覚ます。大きなジッパー、背中に“9”というマークがある。部屋の中は散らかり、一人の老人が突っ伏している。・・・・どうやら死んでいるらしい。そこで主人公は、何か『ボタン』のような半球状の物を見つけ、なんとなしに拾ってくる。
←『ボタン』とはコレ(見えづらいが)。服に付いてるボタンの方ですね。カメオやブローチの方が近いかな。
 しかし、主人公たる人形は自分が何者か分からない。とりあえず部屋の外に出るも、外は果てしなく広がる廃墟。しかたなく廃墟を歩いていると、背中に“2”と描かれた自分と同じような人形に出会う。

 “2”によると、自分たち以外にも仲間がいるという。そして“2”は“9”が見つけてきたボタンを見て歓喜してる。これはなにか重要な物らしい。
 そんなおり、2人は突如、巨大な犬のような機械に襲われる……。



 ホラーっぽい演出と退廃した雰囲気。オープニングの老人の手の質感は素晴らしいですね。アニメ映画はあまり見ないのですが、これだけでちょっと興奮してしまいますね。


<ストーリー、オチ前まで>
 “2”は“9”を逃がすために犠牲となり、犬型の機械に連れ去られてしまう。と、同時に犬型機械はそのボタンを奪っていく。“9”は命からがら逃げ出すも腕に怪我を負い倒れてしまう。
 目を覚ますとそこはベットの上。背中に“5”と書かれた片目の人形とであう。彼は“9”を見張り小屋から見つけ助けてくれたらしい。ここは大きな洋館の中で、安全な場所で仲間もいるという。
 しかし、そこに新たに、王様のような格好をした“1”と大剣で武装した大男“8”が現れる。彼らは“5”を「外に出た」という罰で処罰しようとしているようだ。この洋館の中は   “1”の強権によって支配されていた。
 連れ去られた“2”を助けに行くべきだと“9”は主張するが、“1”は「外にはビーストという機械がいて危ない。これ以上人が減るのは困るので外に出てはいけない」という。コレまでも既に“3”“4”“7”が外に出てきて戻ってきていない事が明かされる。
 そして、“1”によって、世界に何が起きたのかが明らかになる。

 かつて世界では、機械が反乱を起こし、人間を滅ぼしてしまったのだという。

 “1”によって“2”を助けに行くのを禁じられたものの、“9”は『自分に責任がある。』として助けに行くことを決意し、“5”も“2”に恩があり、2人で助けに行くことにする。

 2人が“5”を連れて行ってしまった機械の後を追いかけると、一つの洞窟にたどり着く。中は廃工場のようになっている、そこで鳥かごの中で捕まっている“5”を見つける。しかし、そこには犬の機械もいて3人は絶体絶命の危機に瀕する。
 しかし、そこに勇敢かつ素早い人形が現れ、機械を倒し、3人を救う。この人形はいなくなってしまったはずの"7"だった。(7は女性)
 “2”“5”“7”が久しい再会を喜んでる間に、“9”は犬型ロボが持って行ってしまった「ボタン」を見つける。その前には、この「ボタン」にぴったり合いそうなくぼみがある。なんとなしに“9”は「ボタン」をそこにはめてみる。すると、大きな蜘蛛のようなロボが起動し、"2"を襲うと彼から魂のような光を吸い取り、殺してしまう。残された3人はそこから命からがら逃げ出すものの、自分達がなにか得体の知れない物を復活させてしまった事を知る。

↑起動する蜘蛛型マシーン

↑魂を吸われる"2"

 "7"の案内で、やはり行方不明であった"3"と"4"にであう。彼らのナビゲートで過去の映像を見ることに。それは人間が作った記録映画で、あのロボがある科学者によって作られた、人工知能を持つ『マシン』という機械であることを知る。『マシン』は軍用機械を作っていたが、後に反逆を起こし、人間に反旗を翻したのだ。
 いわば、戦争の元凶を復活させてしまったことを知った人形達。 
 とりあえず本拠地である洋館に戻ることにした"5"と“9”。しかし、そこに鳥型のマシンが現れる。『マシン』はもうすでに軍用機械の製造を始めたのだ。
 ギリギリのところで鳥型のマシンを倒すも、もう洋館も安全ではない。人形達は新たな地をもとめ、あたらしい家を探し出す。しかし、そこにも『マシン』の魔の手が。あらたな機械は人形達を連れ去る事を目的に作られたようだ。人形達は戦うが、その中で戦いの主軸であった"7"と"8"が連れ去られてしまう。それも敵の本拠地である廃工場へ。
 勇気を出して敵の本拠地へ向かう"1""3""4""5""6""9"、"9"は全滅の危険を防ぐために単身敵の本拠地に忍び込む。
 そこで、また、『マシン』が"8"の魂を吸い込む瞬間を見てしまう。"7"まで殺されないために"9"は知恵を絞り、連れ去り機械を倒し"7"を救い出す。
 そうして、廃工場の外では他の人形達が、"5"を主導として「タンク爆弾(ドラム缶に燃料を入れただけの物)」を作り、2人の脱出を待っていた。
 2人が脱出するとタンク爆弾を地下へ落とし込み爆発させる。廃工場はハデな誘爆を起こし爆発する。



"6"の説明がほとんどありませんが・・・・かれはその・・・・いらない子・・・・では無いんです。主人公を啓蒙し、指針を与える存在なのです。しかし、ストーリーの説明上は省かざる終えないです。
 続きです。



<以下オチまで>
 勝利を確信し、踊り狂う人形達。しかし、『マシン』は死んではいなかった。逃げ遅れた"5"と"6"の魂をも吸い込む。
 なんとか逃げ切る"1""3""4""7""9"。"9"以外の4人はあの『マシン』をすぐさま破壊することを提案する。が、"9"は『『マシン』の中で、みんなの魂がまだ生きている。』と唱え、『彼らの魂を開放してから壊すべきだ!』という。この提案は現実的ではない。受け入れない4人。"9"は彼らを置いて自分の根源<ソース>を探そうとする。そこに、『答え』があるのではないかという。
 "9"にとってのソース、それは「産まれたあの部屋。」なぜ自分は産まれたのか?それを探すことにする。
 最初の部屋に戻ると、老人の死体が何か持っていることに気づく。木箱だ。その木箱を開けると中から3Dの映像がながれ、今や死体となっている老人の姿が現れる。

 彼によれば、『マシン』は自分が作ったもので、この『科学者』の知識が埋め込まれているという。しかし、軍部によって開発途中に取り上げられて、軍事転用されてしまったのだという。しかし、この『マシン』には構造的な欠陥があった。『科学者』の「魂」が宿っていないのだという。必然的に『マシン』は暴走し、人間を破壊してしまう。
 そして『科学者』は、この『マシン』を止めるために、小さな9体の人形を作り、「魂転移マシン」によって自らの魂を込めたのだという。『科学者』は自らの魂を込めたために、9体目の"9"を作ると、死んでしまった。あの『ボタン』は器から魂を取り出し、別の器に魂を転移させる仲介装置のようだ。
 『科学者』は"9"にこの『ボタン』の使い方を教え、希望を託したい、という。

 "9"はボタンの使い方をしり、『マシン』にとらわれてる人形達の魂の取り出し方を知ると『マシン』のところへ向かう。生き残った人形達と合流し、マシンを倒す算段をたてる。
"9"『僕がボタンの操作法を教えるから、僕が魂を吸われ、囮になっている間に、ボタンを取り返してくれ』
 『マシン』がボタンを晒すのは、誰かの魂を吸っている間だけ。ここにいる誰かは犠牲にならなければならない。
 『マシン』の気を"9"が引きつけ、魂を吸われる瞬間、
"1"「人間の尻ぬぐいを、どうして我々が・・・・」
"1"が"9"を押しのけ身代わりになる。驚く"9"だが、すぐさま『マシン』から『ボタン』を取りはずすと、『ボタン』を操作して『マシン』から魂を吸い取り、『ボタン』に人形の魂を取り返し、『マシン』の機能を停止させる。


 ラスト、キャンプファイヤーを燃やし、それを囲むようにそれぞれの墓標を掲げる。そうして、燃える炎を前に、残された4人は『ボタン』を開き5人の魂を開放する。5人の魂は笑顔を浮かべ天に昇っていく。
"9"「彼らは自由になったんだ」
"7"「これからどうなるの?」
"9"「それは、わからない」

 廃墟に残された人形達の引き絵で物語は閉じる。